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NTT DATAならではの総合力が
ブロックチェーンを活用した
新たな社会インフラを構築する。
ビットコインのコア技術であり、FinTechへの応用が期待されるブロックチェーン。しかしブロックチェーンの持つ特色が活かされるのは金融分野だけに限らない。2015年に発足したブロックチェーンチームは「NTT DATAならではの強み」を発揮するブロックチェーンの適用領域(ユースケース)を模索し「貿易」分野への応用を打ち出した。「ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤」の実現。それはこれまでにない新たな社会インフラ構築への挑戦であり「0」から「1」を生み出すチャレンジでもあった。プロジェクトはフェーズを進めるごとにスケールアップし、多くのステークスホルダーを巻き込んだ壮大なものへと進化していく。
Project Member
※掲載内容は取材当時のものです
Missionブロックチェーン × 貿易情報で新たな社会インフラを実現
2009年、分散システム上で取引される仮想通貨・ビットコインが登場した。運用主体が存在せず、金融機関を介さず直接的な決済を可能にしたビットコインは瞬く間に国境を越えて広がった。このビットコインを実現するために生み出された技術がブロックチェーンである。ブロックチェーンは「ハッシュ」や「コンセンサスアルゴリズム」といった既存技術を組み合わせることで、それまで中央組織が担っていたデータの正当性を分散システム上で保証することに成功した。ブロックチェーンとビットコインは同一視されることも多いが、実はブロックチェーンの仮想通貨への応用はその一例に過ぎない。フィンテックとして注目される金融分野だけでなく、公共分野や製造・物流分野などあらゆる業界でブロックチェーンの特長を利用した様々なサービスへの応用が期待されているのだ。
NTT DATAに「ブロックチェーンチーム」が立ちあげられたのは2015年のことだ。プロジェクトチームが掲げた目標は主として2つ。一つは、最先端のブロックチェーン技術を研究し、その知見を集積すること。そしてもう一つは、蓄積されたブロックチェーンの技術を活用し、NTT DATAならではのビジネスを創発することだ。単にブロックチェーンを応用するだけでは意味がない。そこにNTT DATAが取り組む意義を見出し「NTT DATAにしかできない何か」を実現することがブロックチェーンチームに課されたミッションだった。金融事業推進部をはじめとして、金融部門・公共部門を交えた計7名が参加し、ブロックチェーン実用化に向けた検討が重ねられた。「ブロックチェーンの持つ特色が最大限に生かせる領域、業務」とは何かを抽出し、そこに「NTT DATAの強み」を掛け合わせる。そこで導き出されたのが「貿易業務」という解だ。ブロックチェーンはオープンなネットワーク上で、さまざまな業界・企業といったステークホルダーを繋ぎ、信頼性を担保しながら情報のやりとりを可能とする技術である。そして、貿易業務には「輸出者」と「輸入者」だけでなく、信用状の発行や決済を行う「金融機関」や貨物輸送を行う「運輸会社」、事故などのトラブルに備えた「保険会社」など、数多くの機関、企業が関わっており、その間に多数の情報が行き交っている。ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤をこれら貿易業務に関わる契約や手続きに関する情報をステークスホルダーが信頼できる形で共有できるプラットフォームができれば、膨大な紙の書類は不要となり、手続きに関する手間と時間は大幅に短縮する。それはまさに「ブロックチェーンによって実現するオープンな連携が、新たな社会の仕組みを生み出す」新たな可能性の追求であり、社会インフラの創出ともいうべき、壮大なチャレンジだった。
貿易取引では、輸出者・輸入者それぞれのリスクを回避するために、銀行が信用状を発行し決済を保証するシステムを採っている。しかし既存の信用状取引では、輸出者、輸入者、銀行等と取引関係者も多いうえ、郵送やeメールなど手続きに時間を要することが課題となっている。ブロックチェーンチームはまずフェーズ1として、2016年にブロックチェーン活用に関心を示す金融機関などと協働し、ブロックチェーン技術を用いた信用状取引に関するPoC(Proof of Concept:実証実験)を行った。この結果、信用状取引における手続き時間を大幅な短縮化、および信用状の修正手続きについても迅速化が可能となることを確認した。続く2016年から2017年にかけて行われたフェーズ2では、損害保険会社と連携して外航貨物海上保険における保険証券の電子化ならびに、ブロックチェーンによる流通する貿易書類のデータ化を実施し、安全性や業務効率性を含む実業務への適用可能性、コスト削減効果などを検証するPoCを行った。保険証券のデータ化にあたっては、ブロックチェーン上にあるL/C(信用状)やInvoice(商業送り状)、B/L(船荷証券)の情報を取り込み、これをブロックチェーン上の保険証券に反映することで、他の貿易関係書類との連関性についても検証。このPoCでも既存の方法と比較して保険証券発行に関わるコストが6分の1、保険申し込みに要する時間が7分の1に削減されるなど、驚くべき効果が確認されている。これらフェーズ1、フェーズ2のPoCによって、貿易業務全体へブロックチェーン技術を適用することの有効性と課題が確認されたことから、NTT DATAは広く貿易関係者の参加を仰ぎ、フェーズ3としてブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤の実現に向けた検討とPoCを実施するためのコンソーシアムを発足へとつながっていく。
こうしてプロジェクトの概要を追うと、NTT DATAならではの特色・強みが見えてくる。一つはもちろん最新のブロックチェーン技術を用いてプロトタイプを開発した「技術力」だ。もう一つは「貿易業務」にフォーカスしたビジネスセンス。そして最後に多くのステークホルダーを巻き込んで新たな社会インフラをつくりあげていく、そのプロデュース力である。「ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤の実現」はとうてい一企業だけで為しえるものではない。業界をまたいだ多くの企業の協力があってはじめて挑戦可能なものだ。技術力だけで、あるいはビジネスセンスだけで、世の中にまだ存在しない、新たなプラットフォームづくりには挑めない。「0」から「1」を生み出した今回のチャレンジは、これまでに多くの社会インフラ構築に寄与した実績に裏打ちされたNTT DATAならではの強みを大いに発揮している特色といえる。
現在、プロジェクトはフェーズ3の最終段階に進んでいる。フェーズ3ではNTT DATAが事務局を務める日本初の「ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤実現に向けたコンソーシアム」を発足し、総合商社をはじめ、銀行、船会社、保険会社、物流会社など日本を代表するリーディングカンパニーである18社と貿易情報連携基盤の実用化に向けて活動中だ。また並行してシンガポールの貿易プラットフォームであるNTP(Networked Trade Platform)との接続に向けたPoCも実施し、クロスボーダーの貿易文書の電子的交換の検証も終えている。2018年7月にはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」の一環として「IoT技術を活用した新たなサプライチェーン情報共有システムの開発」の委託先にも選定された。わずか7名でスタートしたブロックチェーンチームの構想は社内関係各部署を巻き込み、日本を代表する多くの貿易関連企業の協力を得、官民連携しての社会的プロジェクトに進化したのである。ここでは2019年度中に貿易情報連携基盤の社会実装に向けて活動する2人のチームメンバーを紹介する。

Project Formation
