グリーンイノベーション推進室長が語る
脱炭素社会への取り組み
From now!
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脱炭素化への取り組み
〜2050年ネットゼロを目指して

下垣 徹 コーポレート統括本部
サステナビリティ経営推進部
グリーンイノベーション担当
グリーンイノベーション推進室長
2003年入社
情報学研究科専攻

入社後、ビジネス開発事業本部に配属され、オープンソースソフトウェアのデータベース製品の性能改善や機能拡張の研究開発に従事する。1年目の冬には3名のパートナーさんを従えて開発プロジェクトをリード。3年目にNTTデータ先端技術株式会社へ出向し、NTTグループ全体の技術支援を行い、NTTグループのミッションクリティカルシステムを新規技術で構築する。8年目、基盤システム事業本部に異動。当時、大きなムーブメントとなった「ビッグデータ活用」実現のための基盤であるHadoopのエンジニアとして活動し、各種基盤の構築を担当する。この間、スタートアップと連携した新規ビジネスの立ち上げや自社主催の技術系イベントの企画・運営、書籍の執筆などにも携わる。その後、人事本部での採用担当責任者や先進コンピューティング技術センタのセンタ長を経て、19年目にグリーンイノベーション推進室長となり、現在に至る。

社会的価値と経済的価値、共通価値の追求へ

2021年10月に「グリーンイノベーション推進室」が新設されました。新設の経緯について教えてください。

NTTデータはこれまでも環境問題について積極的に取り組んできました。しかし、昨今の気候変動問題はこれまでとはまったく風向きが違い、一刻を争う重要な社会的課題として急速な広がりを見せています。NTTデータとしてもより踏み込んで取り組む必要があり、グリーンイノベーション推進室の立ち上げに至りました。

もともとNTTデータでは、企業理念として「情報技術で新しい仕組みや価値を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」ことを掲げています。この企業理念そのものがサステナビリティの実現だと考えています。気候変動問題に対しては、個社の活動だけではなくサプライチェーン全体、ひいては社会全体を見据えて取り組むことが不可欠になります。そうした観点から、NTTデータはどんな役割を担えるか、どんな貢献ができるか、考え続けています。
NTTデータではこれまで、社会基盤となるANSER®やCAFIS®︎のように、深い顧客理解や高度な技術力でシステムを作り上げる「つくる力」、データ・モノ・ヒトを「つなぐ力」を通じて新たな価値を生み、お客様や社会の問題を解決することを実現してきました。この「つくる力」「つなぐ力」を活用し、自社のサプライチェーンだけではなく、複数の業界にまたがるサプライチェーンの排出量の相互連携も視野に入れながら、お客様、サプライヤーとともに社会のカーボンニュートラルの実現に貢献できると考えています。

*ANSER®️:残高照会や入出金明細の連絡、顧客の口座からの振込・振替などを会社や自宅、外出先などでも利用できるサービス(インターネットバンキングやテレホンサービスを可能にするシステム)です。1981年からサービスしており、全国で500以上の金融機関に利用されています。
*CAFIS®️:CAFIS(キャフィス)は、接続社数・取引量ともに日本最大級のキャッシュレス決済プラットフォーム。1984年からサービス開始し、35年を超える豊富な運用実績を持ちます。CAFISは、国内のほぼ全てのクレジットカード会社様、金融機関様、収納機関様と接続されています。 加盟店様はCAFISと接続することで多様なキャッシュレス決済をご利用できます。

グリーンイノベーション推進室のミッションとはどのようなものですか?

グリーンイノベーション推進室の役割は二つあります。一つはNTTデータ自身がCO2排出を減らしていく取り組みです。これはCSR(企業の社会的責任)としての側面が強い取り組みで、Green Innovation of ITと呼んでおり、IT自身のグリーン化、ひいてはNTTデータ自身のグリーン化を指します。もう一つはITを活用して社会全体の脱炭素化(CO2排出の実質ゼロの実現)への取り組みを推進していくことです。こちらはGreen Innovation by ITと呼び、ITの活用によるグリーン化、ひいてはお客様や社会のグリーン化を指しており、いわば、ビジネスと一緒にやるという話です。CSV(Creating Shared Value)という経済的価値と社会的価値を同時に実現していく「共通価値の追求」という考え方です。ITの力を使って何かできないか。お客様に対して気候変動問題に関してのコンサルティングや解決策を提供していくことです。国内事業分野と海外グループ会社と連携しながら、この二つのグリーンイノベーションを推進していくことがグリーンイノベーション推進室のミッションになります。

二つのグリーンイノベーションへの取り組み

自社における具体的な取り組みについて教えてください。

自社の取り組み〜Green Innovation of ITには、大きく二つの方向性があります。
一つは気候変動問題への対応を加速すべく、グローバルイニシアティブとの連携を強化していく活動です。例えば、国際的NGOのCDP*からは2022年3月に「気候変動コンサルティング」「ソフトウェア」の分野において、日本で初めてのゴールド認定パートナーに認定されました。2022年4月からはCDPサプライチェーンプログラムに日本で初めて最上位のプレミアムメンバーとして参加しています。また、2021年3月にTCFD*提言に賛同を表明し、気候変動リスク・機会についてTCFDのフレームワークに沿った分析・評価を実施し、長期的視点による対策検討を進めています。さらに、Green Software Foundation*の運営メンバーとして、より環境負荷の少ないソフトウェア開発を目指す取り組みを推進しています。JEITA Green×Digitalコンソーシアム*におけるワーキンググループのサブリーダーとしての参加やESTAINIUM協会*の設立を通して、カーボントレーシング領域における国内外ルールの作成など、グローバルスタンダードの策定にも注力しています。これらの取り組みは、イニシアティブとの協働を通して、ルールメイキングを進める活動です。

もう一つの方向性がオフィスやデータセンタにおけるCO2排出量削減への取り組みです。とりわけ、自社の使用電力全体の8割を占めるデータセンタの電力削減や省エネを進め、2030年のデータセンタのカーボンニュートラル達成を目指しています。
2022年4月から、NTTデータが提供する主要サービスANSER®、CAFIS®︎、OpenCanvas®︎の運用で使用する全電力を100%再生可能エネルギーに切り替えています。また、データセンタの建物自体においても、設備面と運用面から電力効率を向上させることで省エネを実現しています。具体的には冷気と排気の気流改善により装置の冷却効率をアップさせたり、AIを駆使したスマート空調制御システムにより最適な空調制御を自動化し、冷やしすぎや熱だまりの発生を防いだりしています。さらに、「液浸冷却方式」を採用したデータセンタ冷却システムを構築することで、冷却のためのエネルギーを従来よりも最大97%削減できることを実機検証で確認しました。こうした検証で得られた結果や自社での取り組みをモデル化し、省エネデータセンタサービスの実装・提供につなげる取り組みも行なっています。

*CDP:気候変動に関する最も有名なNGOの一つ。世界の企業に対して気候変動問題に関する情報開示を行い、取り組みへの格付けも行なっている。
*TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース。気候関連の情報開示及び金融機関の対応を検討するために設立された。
*Green Software Foundation: Linux foundationの配下に設立された非営利団体。パリ協定で定められた「2030年までにICT分野における温室効果ガス排出量を45%削減」への貢献を目標としている。
*JEITA Green×Digitalコンソーシアム:一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が事務局を務めるもとで2021年に設立。環境関連分野のデジタル化や新たなビジネスモデルの創出などを通じて2050年カーボンニュートラルの実現に寄与することを目指す。
*ESTAINIUM協会: NTTデータを発起人の一企業として、14の関連企業・団体・学術機関と共に設立された非営利団体。サプライチェーン上の企業間で温室効果ガス排出量データをセキュアにやりとりできるオープンな基盤を構築し、産業界の脱炭素化を目指す。

もう一つのGreen Innovation by ITに関してはいかがですか?

お客様、社会全体に向けた脱炭素化の取り組みでは、グリーンコンサルティングとGHG(温室効果ガス)排出量可視化ソリューションの提供を行なっています。2022年1月からグリーンコンサルティングサービスの提供を開始しました。お客様を取り巻く環境の分析や戦略策定から、デジタル技術を活用した排出量削減支援、電力消費の見える化・最適化のソリューション提供、施策の実行まで幅広く、お客様に寄り添い包括的な支援を行なっています。脱炭素化に向けては、可視化・計画・削減の3ステップが基本となりますが、まずは可視化することが重要です。可視化については2種類あり、一つが企業全体のGHG排出量の管理です。これは投資家などに開示するものです。もう一つが製品・サービス別のGHG排出量の管理です、これは製品の競争力を取引先にアピールしていくものです。前者に関しては、グリーンコンサルティングサービスの一部として、GHG排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle™」を提供しています。製品・サービス別の可視化に関しては、旭化成と共同開発した製品別CFP*管理基盤があります。工場の製造過程における排出量(Scope1,2*)だけではなく、仕入先原料メーカーや外注業者の加工プロセスの排出量(Scope3*)の積み上げを行い、最終製品に紐づけて製造プロセス全体のCFPを可視化する基盤を構築しています。

カーボンニュートラルの達成には、再生可能エネルギーをはじめとする分散型エネルギーのさらなる普及が必要になりますが、需給バランスが崩れないために電力を安定的に供給するという課題があります。NTTデータでは、この課題解決に向けても、日新システムズやネクスシステムと共同で、電力に関するさまざまなデータを収集・流通・分析・活用し、関連する事業者に必要なデータを安全に提供する情報流通基盤に関する実証実験を2022年7月から沖縄県宮古島にて実施しています。

*CFP:Carbon Footprint of Products。製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通してのGHG排出量をCO2に換算して表示する仕組み。
*Scope1,2,3:Scope1は自社が直接排出する温室効果ガス排出量、Scope2がエネルギー起源の間接排出量、Scope3がサプラチェーン全体の排出量を指す。

環境問題への関心が高い、若い世代に大きな期待

NTTデータならではの強みはどんなところですか?

カーボンニュートラルの達成や資源循環型社会、人権デュー・デリジェンスの実現などの社会問題の解決には、サプライチェーン全体で各組織が保有するデータを正確に流通できる仕組みが不可欠です。NTTデータでは秘匿データを保護しつつ、必要なデータのみを相互流通できるセキュアなデータ連携プラットフォームを検討しており、一つのユースケースとしてデンソーと共同で電動車向けバッテリーの業界横断エコシステムの構築に着手しています。これは一例ですが、こうしたサプライチェーン全体を巻き込んだ連携プラットフォームを構築できるところがNTTデータの強みの一つと考えています。

今後のさらなる取り組みを教えてください。

現在、NTTデータでは、2050年の社会全体におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、2040年までにScope1,2のカーボンニュートラル達成を、2050年までにScope1〜3のネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成を目標に掲げています。まずはグリーンイノベーションの推進により、自社のサプライチェーンを通じた温室効果ガスの排出削減のみならず、お客様や社会全体のグリーン化に貢献していきたいと考えています。さらに、脱炭素化への取り組み以外にも、サステナブルな社会の実現に向けて、Circular Economy(資源循環)やNature Conservation(生態系保全)などにも取り組んでいます。資源トレーサビリティの確保によって製品やサービスの価値が循環し続ける社会の実現を目指すとともに、生態系の保全によって健全な地球環境を維持し、人々の豊かな生活に貢献していきたいと考えています。

NTTデータを志望する就活生に期待することはありますか?

目まぐるしい変化に対応していく力が重要だと感じています。これまでも、データウェアハウスやデータマイニング、クラウド、ビッグデータ、IoT、AIなど、「新時代が来るぞ」という警鐘を鳴らしながら、次々と新たなキーワードが登場してきました。私たちNTTデータでは、一貫して「世の中が変わる」転換点にタイムリーに対応しながら、新たな技術やノウハウを積み上げていくことが、次の変化を的確にキャッチアップし、適応するための土台になっていると感じています。

このような変化に対応していくためには、新しいことへの好奇心を持ち続けることが必要です。失敗しても成功するまで継続できる粘り強さやチャレンジ精神も不可欠です。案件の中で他者のことをリスペクトしつつ取り組める協調性も必要ですし、「あの人は〇〇の専門家ですよね」と一人称で声がかかるような専門性も身につけていただきたいと思います。求められる能力は多岐にわたりますが、多様な経験を通じて成長されることを期待しています。

グリーンの分野に関して言えば、現在、若い方は環境問題、とりわけ気候変動問題への関心が高く、そんな若い世代に大きな期待を持っています。ITを活用して社会課題を解決したいという夢や目標を持っている就活生にとって、前述しましたように「共通価値の追求」に積極的に取り組むNTTデータは、活躍しがいのあるフィールドだと思います。

※掲載内容は取材当時のものです