Project Story
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バチカン図書館、ASEANのデジタルアーカイブ。
AMLADが護り、開く、人類の文化遺産。

世界各地に収蔵された古文書や美術品などの文化財。時代経過とともに劣化する人類共通の文化遺産を、未来永劫にわたって伝える力を秘めたデジタルアーカイブシステムがAMLADだ。2014年にバチカン図書館プロジェクトが始動。同館に保管された2世紀から20世紀にかけて書き残された約8万冊の手書き文献のうち、約3000冊を対象としたデジタルアーカイブを実現した。さらに2020年にはASEAN諸国の文化財保存プロジェクトも第一フェーズが完了。NTTデータの誇るデジタルアーカイブ技術が、世界の文化遺産の保存と活用に力を発揮している。

Project Member

※掲載内容は取材当時のものです

MissionIT × 人類歴史遺産と文化の継承

バチカン図書館は1448年にローマ教皇ニコラウス5世により設立された世界最古の図書館の一つで、人類の遺産ともいうべき歴史的図書を多数所蔵している。なかでも貴重なのは、マニュスクリプトと呼ばれる一点ものの手書き文献である。羊皮紙やパピルスに書かれたもの、金銀によって装飾が施されたものなどがあり、厳重な保存管理下に置かれてきた。だが、年月の経過とともに劣化が進み、このままではいずれ解読不可能となることが危惧されていた。
こうした状況のなか、2012年秋にバチカン図書館側からNTTデータに対して、デジタルアーカイブへの協力について打診があった。貴重な文献やコレクションを長期保存するとともに、研究資材として広く世界に公開したいという要望だった。NTTデータは、日本の国立国会図書館などデジタルアーカイブシステム構築に多くの実績を持ち、これら大規模システムの構築経験をもとにデジタルアーカイブサービス「AMLAD(アムラッド)」を開発、すでにサービスを提供していた。これをバチカン図書館が高く評価し、2014年の初期契約締結につながったのだ。

バチカン図書館内部の様子

しかし、プロジェクトにはいくつもの障壁が立ちはだかっていた。たとえば費用に関する認識の違いである。基本的にバチカン市国は寄付によって成り立っているため、デジタルアーカイブ事業に関しても費用の支払いを要する契約を締結するという概念がない。またバチカン図書館が想定していたボランティアベースの取り組みも事業継続に不安が残る。そこで、NTTデータはバチカン図書館がデジタルアーカイブ化のための専用基金を設立して寄付を募り、そこから事業にかかる費用を充当するビジネスモデルを考案。この提案はバチカン側にも受入られ、これにより本プロジェクト費用の支払いを可能とするとともに、継続的にプロジェクトを推進する仕組みを構築することができた。NTTデータはAMLADをベースにバチカン図書館の文献を保全、公開するプラットフォーム「DigiVatLib」を開発、併せて手書き文献約3000点の電子化に着手した。2018年、バチカン図書館プロジェクトは第一フェーズを完了し、現在はバチカン図書システムの運用保守、および機能追加を請け負っている。今後さらにバチカン図書館とその利用者にとって価値システムとなるよう、サービス拡充に努めていく予定だ。
このバチカン図書館プロジェクトの成功は、一躍世界の注目を集めた。どの国々・地域にとっても文化遺産の保全とその利用拡充は重要な課題であるからだ。さまざまなオファーが世界から舞い込むなか、NTTデータが次なるチャレンジに選んだのがASEANの文化財デジタルアーカイブだった。

バチカン図書館に実際に所蔵されている書物(例)

端緒は2018年。域内格差を是正し、共同体の更なる強化をめざすASEANと、その支援をするために日本政府が拠出した日・ASEAN統合基金(Japan-ASEAN Integration Fund(JAIF))との連携によってプロジェクトが始動。目的はASEAN10カ国が保有する文化財の電子化による保全を進めると同時に、それらを一元的に閲覧できるプラットフォームを提供することで、「ASEANの文化の保全」「発信」「ASEAN地域の一体感の醸成」に貢献すること。また、日本政府がASEANを支援する国際協力プロジェクトという側面もある。
いわば10カ国のさらなる一体感の醸成のためにも文化保全を推進したいASEANと、ASEANに対して文化面での支援策を検討していた日本政府、そしてバチカン等の実績を持ちデジタルアーカイブ事業のさらなる展開と社会課題への挑戦を模索していたNTTデータの理念が一致したプロジェクトといっていい。
プロジェクトは2018年から2年をかけ、プロジェクトのフェーズ1として、インドネシア・タイ・マレーシア3カ国の文化財、計160点の電子化を実施。これまでAMLADが対応していた静止画や画像・音声だけではなく、3Dデータのアーカイブにも対応し、文化財の三次元形状を保全し公開する機能を実現した。これらのデータは「ASEAN Cultural Heritage Digital Archive(ACHDA)」としてインターネット上に公開されている。現在ASEAN事務局及び日本政府との協力のもと、残る7カ国への事業展開が検討されている。

「ASEAN Cultural Heritage Digital Archive(ACHDA)」に公開されている3Dデータ

人類の共通遺産を保全し、広く活用するNTTデータのデジタルアーカイブ。ここでは初期からバチカン図書館プロジェクトに携わり、4年間イタリアに駐在してシステム開発を主導した高橋由香と、2018年から営業担当としてバチカン図書館、ASEANの両プロジェクトに携わる長谷部旭陽に、国際的価値を持つプロジェクトに参加する醍醐味と難しさを聞いた。

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